草津駅からレンタサイクルで行ける滋賀の山奥MIHO MUSEUM

滋賀県甲賀市の山の中にMIHO MUSEUMという美術館がある。ルーブル美術館のガラスのピラミッドを設計した建築家として有名なI・M・ペイの作品で、日本国内で一般に見学できる施設としては唯一のものだ。

京都に5年住んでいながら、何となく行く機会がなかった。紫式部が源氏物語を書いたことで有名な石山寺までは足を伸ばしたが、宗教法人の運営ということもあって敬遠していたのかもしれない。実際に訪ねてみるといたってまともな美術館で、思いのほか観光客でにぎわっていた。

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石山寺からバスで行くより安い

JR駅からの交通アクセスを調べると、最寄りの石山寺駅からバスが出ているようだ。1時間に1本くらいで所要時間50分、片道820円の長旅なので、自家用車かレンタカーで行く方が便利だろう。

地図を見ると、山の中といっても駅から20kmくらいの距離でそんなに標高も高くなさそうだ。以前、奈良市内からMTBを借りて伊賀上野城まで往復したことがある。そろそろ暖かくなってきて自転車に乗るのも楽しそうに思われたので、草津駅でレンタサイクルを借りて向かってみた。

美術館からの帰りにStravaの記録が飛んでしまったようだ。しかも電車に乗ってから気づいて終了したので、上の画像に表示されている距離は参考にならない。後からGoogleマップで調べたところ、草津駅からミホミュージアムまで県道16号経由の距離は片道18.3km。美術館の標高は390mだった。

琵琶湖周辺はロードのレンタルもあり

週末、久々に18きっぷを買って東京から名古屋~岐阜~京都を旅している。各地で友人と飲んだり、軽く仕事の打合せをしたりしながら気ままな一人旅。せっかく旅費を節約したので、交通費はなるべく安く抑えたい。東海道本線の石山駅から、18きっぷが使えない私鉄で石山寺駅に行くのは何となく気が乗らない。

滋賀県のレンタサイクルを調べたところ、駅から少し遠いが、ジャイアントストアなどクロスバイクやロードバイクを貸してくれるお店もあった。前に彦根でアルミのロードを借りて琵琶湖一周したことがあるが、このあたりは「ビワイチ」という定番のサイクリングコースがあるため自転車文化が盛んなようだ。道すがらすれ違う中高生も、ドロップハンドルのロードバイクに乗っている割合が多かった。

今回はミホミュージアムまで往復40kmの距離。予想では半日もかからないプランなので、費用的に本格ロードを借りるまでもない。自転車で行くことも当日電車の中で思いついたので、春休みの休日、当日予約も取れそうにない。結局「駅リンくん」という草津駅直結のショップで普通のママチャリを借りることにした。

ギアなしのママチャリでも行けた

「駅リンくん」はJR西日本系列のレンタカー屋さんのサービスで、大阪から富山や山口まで広く展開しているようだ。草津駅での1回利用料金は350円。定期利用の自転車も含めて、大量にストックされていた。自転車リテラシーの高そうな滋賀県なのでちょっと期待したが、残念ながらギアは付いていなかった。

草津駅の改札を出て右側にコインロッカーがあるので、まずはここで荷物を預ける。上着を脱げば、そのまま山にも登れそうな服装とスニーカーで来ていたのがよかった。防寒着や飲み物はママチャリのかごに入れればいいので、手ぶらで済ませられた。

駅を出て国道1号線に入り、ロードサイドのガストで腹ごしらえ。そこから左に折れて新幹線の高架下を通り、パナソニックの巨大な工場を抜けて名神高速をくぐる。県道43号のちょっとした坂を超えると平野町という交差点があり、この角にあるローソンが最後の補給ポイントだ。

道が徐々に細くなり、橋をいくつか渡ると見慣れた感じの山道になる。山といってもほとんど坂はなく、目指す美術館までいかにも峠と呼べるような区間はなかった。変速なしのママチャリでも、立ちこぎすれば足を着かないでこなせるくらい。最後にある駐車場前の急坂は自転車を押して歩いたが、それ以外は乗ったまま走れた。

ママチャリで上り坂をダンシングするときは、『弱虫ペダル』の進化した御堂筋君みたいに、バッタみたいなスタイルで前方に背筋を伸ばすといいようだ。ハンドルが後ろにあるので肘まで伸ばしてスキーのジャンプをしているような格好になる。見た目は変かもしれないが、この方がハンドルがぶれずバランスを取りやすい。

途中にある川原とか滝とか

片道約20km、琵琶湖一周よりは断然楽なので、カップルやファミリーでポタリングというのもありだろう。渓谷の眺めもきれいだが、意外なほど車やバスが通るので注意が必要だ。途中にある秀明会の宗教施設や、自然農法の建物に入っていく車も多い。あとはこの先のゴルフ場に行くお客さんかもしれない。

途中に「三筋の滝」という地味な観光スポットがある。道端に自転車を止めてちょっと川に下りれば見られる距離にあるので、せっかく自転車で来たらぜひ寄っておこう。それ以外はときどき見える川原以外、特に見どころがないコースだ。

残り9kmくらいから、美術館までの距離案内が出てきて助かる。ずいぶん遠いところに臨時の駐車場があって不思議に思ったところ、最後の分岐を抜けてから渋滞が発生していた。立地的には閑散としている予想だったが、思いのほかにぎわっているようだ。

ミュージアムに着くと駐車場の中に駐輪場もある。ときどきロードバイクの人たちとすれ違ったので、近隣から自転車で来る人も多いのだろう。さすがにママチャリで上って来るケースは少ないようで、Tシャツ1枚で汗かきながら必死でこいでいたら、ほかのお客さんや駐車場スタッフの笑いを取れた。

外国人観光客に大人気

最初に受け付けでチケットを買おうと向かったら、何やら行列ができている。先にトイレを済ませようと思ったら、こちらもさらに30人待ちくらいの長蛇の列。男性トイレを女性用に割り当てて、男性は地下の事務用トイレに案内されているようだ。この先、トンネルを抜けたミュージアム本館のトイレはそこまで混んでなかったので、急ぎでなければ先に進んだ方がいい。

まるで横浜コスモワールドにディズニーランド並みの観客が殺到したかのような、異様な光景だった。明らかに施設のキャパオーバーで事故でも起きないか心配だが、特に宗教行事があるとか、イベントがらみの混雑でもなさそうだ。

観察していると、どうやら大型バスで続々乗り付けてくるのはほとんど中国人旅行客だった。欧米人も含めて8割は外国人といえる。一昨日、名古屋の徳川園やテレビ塔に登った時も同じ状況で、最近国内の観光地では日本人の方が少ないことが多い。

先日行った鹿児島の砂むし温泉も中国人で大混雑だった。どちらかというとひなびた古寺や温泉より、インスタ映えする派手なビジュアルの観光スポットが人気なのだろう。

山奥にある神殿のような建物

エントランスからトンネルまでの間、枝垂れ桜が満開だった。ふもとの方では桜も散りかけているが、山の上なので開花が遅いようだ。これを目当てに来ているお客さんも多いのかもしれない。

MIHO MUSEUMといえば金属パネルで覆われたSFチックなトンネルが有名だ。美術館側のワイヤーで吊られた橋もきれいだが、山奥でこのハイテクな演出というギャップがすごい。「トンネルを抜けると桃源郷」という中国の古典からとられたコンセプトのとおり、日本的なセンスではない海外の美術館に来たような印象がする。ガラスの屋根もピラミッドと入母屋っぽいかたちが入り混じっていて不思議な感じだ。

建築本体は基本的に地中に埋められているので、外から見えるのはガラスの屋根くらい。屋根を支えているトラスの部材が太いので、ルーブル美術館のように「軽やか」というより重厚感を感じる。日射制御のためか、ガラスの下にルーバーも配してある。

内部は床も壁も高級そうな大理石で覆われていて、まるでピラミッドかエジプトの神殿のように見える。エキゾチックな外観だが、世界各地の古代美術を集めたコレクションというイメージには合っている。山奥にこんな施設が存在することが異様というか、宗教のパワーを思い知らされる。

とはいえ、いたるところに教団の教義が掲げてあったり、(古代美術を除いて)宗教的なオブジェが飾ってあったりするわけでもない。純粋に美術品を鑑賞するという観点からすれば、この上ないシチュエーションだ。軽くドライブして山の中に行くだけで、ちょっと海外旅行したような気分を味わえる。

外の景色と展示品どちらも素晴らしい

春の企画展は「猿楽と面」。ちょうど徳川美術館でも能の面を見て来たところだったが、こちらのコレクションは数が半端でない。北陸のプリミティブなスタイルや、狂言用の口が曲がったもの、猿のお面などはユニークで記憶に残っている。それ以外の「翁」や「若い女」は、どれも似たような感じで印象が薄い。100個くらい大量に陳列されているので、1つずつじっくり見ている余裕がなかった。

常設展の方は、古代ギリシア・ローマからエジプト、ペルシア、アジア各地域の古代美術が集められている。金銀ガラスの財宝で、いくつかは教科書で見たような国宝級の展示品に見える。各地域の小部屋には、I・M・ペイの設計意図が書かれているので興味深い。特大サイズの仏立像やカーペットには、そこだけ天井を変形してトップライトで自然光が当てられていたりする。

ガラスの窓から山々を眺められる、吹き抜けで開放的な廊下部分と天井の低い展示室。両者を行き来しながら散策するコースになっているので、展示品は多いが飽きなかった。室内にところどころ植物も植えてある。今日はお客さんが多すぎてじっくり見られなかったが、空いていれば一日中過ごしていたい美術館だった。

京都駅近くの有名ラーメン店

草津駅でレンタサイクルを借りれば350円。石山寺駅からバスで往復すれば1,620円。浮いたお金で京都駅に行って第一旭と新福菜館のラーメン屋をはしごするのも18きっぷならでは楽しみだ。高尚な建築や美術品で満足したからか、俗なものが食べたくなってくる。

自転車マンガの『のりりん』を読んでから、ツーリング後にラーメンを食べることに罪悪感を覚えなくなった。スープを飲んで塩分を取り過ぎなければ、糖質とタンパク質をバランスよく補えるいいメニューかもしれない。もっとも、新福菜館の黒いスープは濃すぎて飲み干せたものではないが…

結局行列に並ぶ気になれず、ラーメン屋の向かいにある崇仁新町の屋台村で友人と合流した。こちらは2/1にオープンして、市立芸大の移転まで2年半限定のプロジェクト。コンテナ店舗に入居しているのも地元で流行りのお店ばかりなので、京都駅から歩いて行ける今おすすめの観光スポットだ。

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