国道157号、温水峠、岐阜側ロードバイク「落ちたら死ぬ」ヒルクライム

国道157号を検索すると「酷道!落ちたら死ぬ!」と何やら不穏なウェブサイトばかりヒットする。岐阜・福井県境の温水(ぬくみ)峠を含む157号山間部は、一部マニアの間では日本最強クラスといわれる悪路・狭隘な国道である。

2014年8月に岐阜側から自転車で走行を試みたが、温水峠に至る前に大規模な土砂崩れで行く手を阻まれた。157号は2004年から2012年まで8年ものあいだ通行止めになっていて、復旧後も度々閉鎖されているらしい。最近の状況を調べる限り、2016年11月29日現在は峠まで開通しているようだ。12/1からの冬季閉鎖の前に、2年越しのリベンジで再び自転車で温水峠へのヒルクライムに挑戦してみた。

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樽見駅~温水峠は往復30km、標高差800m

樽見駅付近の集落から出発。根尾から温水峠(標高1,020m)への距離は片道30km、標高差は800m程度になる。昨晩、名古屋から自走してきた157号、山道のゲートまでは非常に走りやすい道路である。日中の気温は12度あり、ところどころ陽も差して悪くないツーリング日和だ。

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岐阜方面から長く走ってきて補給が心もとなければ、道の駅「うすずみ桜の里・ねお」に寄るといい。157号を東に折れて少し坂を上った先にあるが、こんなところにあるにしては、日帰り温泉と宿泊施設も併設されていて贅沢な施設だ。

さらに先に進むと最後の補給ポイント「源屋(みなもとや)」がある。看板の文言が「営業中」とか「やってます」ではなく「行けます」というのが意味深である。根尾では「そこまで辿りつけるかどうか」が問題なのだ。

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谷あいののどかな田園風景の中に、ぽつんと煙突が立っている。

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少し気になって下りてみたら、墓地が併設されている火葬場だった。根尾地域には集落ごとに23もの火葬場があるらしい。住民の高齢化や施設の老朽化で維持管理が難しくなってきているようだが、157号沿いにいくつも見かける火葬場の煙突は、よそ者には不思議な光景である。

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道路情報「通行止め」なら大人しく引き返そう

赤く塗られた橋を渡ると、神奈川県のヤビツ峠のように「大型車通行不能」の看板が現われ、次第に道が狭くなる。157号と並走する根尾川も、さらに深い谷になっていく。

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途中の道路情報を見ると、通行注意ではあるが通行止めとはなっていないので、今日は福井県まで道が通じていそうだ。ここでアウトだったら、自転車でも大人しく引き返した方がいい。こういう場合、車は通行止めでも自転車なら通れることもあるが、2年前の経験からすると根尾の通行止めはネズミ一匹通れない本当の通行止めである。

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「落ちたら死ぬ」はジョークではない

ゲートの前にはお約束の「落ちたら死ぬ!!」看板あり。「○○注意」のレベルでなく、本当に危険。死亡事故も頻発している。後日、道の駅で「福井側からやってきた自転車乗りが店に寄って、そのまま帰らぬ人となった」と聞いてゾッとした。

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157号についておもしろ半分で書かれている酷道ネタの記事をネットで散見するが、車でも自転車でもこの先に向かうなら相当覚悟した方がよい。

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補給できる場所もなく、人通りの少ない山道が10km以上続いてラストは10%程度の勾配もある。正直、乗鞍ヒルクライムを完走できるくらいの体力と経験がなければ、温水峠への登坂は諦めた方が賢明だ。自分も話のネタに一度は走破してみたいと思ったが、毎週末練習で通いたいかというと遠慮したい難コースだった。

黒津から猫峠林道に迂回するのもあり

ゲートから先はぐっと道も狭く険しくなる。途中に2つほど、ほこらとお地蔵さんがあり、こんな山奥でもお供えをしに来る人がいるんだな、と感心する。

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その先、小規模なダムがある。近くにある有名な徳山ダムや上大須ダムを含め、本巣市~揖斐川町エリアはダムのメッカなようだ。

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途中、黒津というエリアで迂回路の猫峠に分岐する道は、工事中で立ち入り禁止になっていた。2年前は途中まで進んで引き返したのだが、今考えると猫峠林道経由で土砂崩れ区間を迂回して、温水峠に到達できた可能性がある。この先の157号、ガードレールなしの危険地帯を回避できるので、遠回りだが右折して猫峠を経由した方がよいという話もある。

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2014年の土砂崩れは見事に復旧

しばらく進んで、2014年の土砂崩れポイントに近づく。当時は雨の日で、まるで三途の川のように見えた寂しい川原が見えてきた。

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その先の道路は水があふれて濡れてはいるが、無事復旧して開通している。崩壊地点と思しき場所には真新しい砂防ダムができていた。

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ここから先は自分にとって未知の区間である。冬季閉鎖間際の平日でも、福井側から下りてくる車と3台ほどすれ違った。自転車ならともかく、車で温水峠を越えるのはよほど腕に自信があるドライバーでなければ難しい。ところどころ2車線だったり相互通行できる場所もあるが、もし対向車が来て崖っぷちを100mもバックすることになったら、自分は車体無傷でかわせる自信がない。

現在人は住んでいないようだが、林業用の作業小屋か、数軒の集落が目に入った。こんなところで遭難しても助けてもらえる保証はない。

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2014年崩壊地点の先に、先ほど分岐した猫峠林道と接続する橋があった。工事中のため、一応こちらからも全面通行止めということになっている。

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周辺の森には「大河原国有林」と看板が立っているが、ところどころ私有林も混ざっているようである。恐ろし気な警告が張り出されており、間違っても分け入らない方がよさそうだ。

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先ほどの小ダムより大きなダムがまた出現した。自分は専門でないが、157号はダムマニアにはたまらない道かもしれない。

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意外と水量の多い「洗い越し」に注意

このあたりまではまだ道も平坦で、落石と断崖に注意すれば走りやすいともいえる。やはり路上に散らばっている尖った小石は多いが、上りで注意を怠らなければ誤って踏むことは少ないだろう。怖いのはスピードが乗った下りである。

途中で3か所ほど路面に水が流れている「洗い越し」に遭遇した。橋を架ける手間を省いて川の水をそのまま道路に流している仕組みだが、意外と水量があるので十分減速した方がよい。

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最初の洗い越しは水たまり程度だったが、2番目は滝のように盛大に水が流れていた。数日晴れが続いた日でこの水量だから、雨の後は大河になっていると思われる。

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3番目の洗い越しは、もはや「川そのもの」である。だんだん難易度が上がるアクションゲームのようだ。何か災害が起こっている訳ではなく、日常的にこの状態。タイヤが流されない程度のスピードでゆっくり進んだが、さすがにシューズカバーが水浸しになって足先が冷えた。

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崖・落石・洗い越しと、危険いっぱいの157号。熊注意の看板もあり、地元の人の目撃情報も多数聞いているので、ハンドルに熊鈴をぶら下げておいた方がよいかもしれない。だが、時には木漏れ日が気持ちよく落ち葉でふかふかのサイクリングロードがあったりする。

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人を寄せ付けない険しい山地だが、他の自転車やバイクもいなくて稀に車がすれ違うだけ。行楽客でにぎわう東京の奥多摩エリアよりも、さらに本格的な大自然で心が癒される気がする。

ラスト3kmの急勾配を超えて温水峠に到達

ほとんど読む人もいないと思うのだが、たまに治山事業や国有林の案内板がある。「温水峠へ3km」という親切な表示があり、誰か気のきいた自転車乗りが貼ってくれたのだろうか。

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ここから先、川原から離れて峠に向けてどんどん標高を上げていく。頂上までの残り3kmはつづら折りが連続して、そこそこハードなヒルクライムだ。路面は悪くなく対向車も滅多に来ないので、落ち着いて勾配の緩いコーナー外側を回っていけばよいと思う。

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温水峠へあと1km…。

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最後は傾斜が緩くなってウィニングラン。やっと福井県境の温水峠に到達した。

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左側には奥美濃の最高峰、能郷白山への登山道入り口があるが、こんなところまで車で来るのも難儀だろう。

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ちょうど福井側から車で警察の方が来られていて話を伺った。このあたりは豪雪地帯だが、わざわざ冬に来て能郷白山に登る人もいるらしい。尾根伝いなので、意外と歩けるそうだ。ポストの登山届を確認されていて、パトロールも一苦労かと思う。157号の福井側は未知の領域だが、またいつか温水峠から下るか逆から上ってみたい。

標高1,000mから凍えるダウンヒル

温水峠に上ったあたりから雲行きが怪しくなり、ぱらぱらと雪のようなものも舞い始めたので急いで退散。完全に冬装備でグローブも2枚重ねだが、さすがに標高1,000mを超えているので下りは体が冷えた。しかも風が強い。

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途中でハセツネで使わずに残っていたクリフショットのラズベリー味ジェルを摂取。さとうきびや塩で味付けしてあって、クリフバーは高価だが他社製品より自然素材にこだわっている気がする。味はそのままラズベリー果汁を凝縮して練った感じで美味。

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温水峠の落石状況

峠の下りはスピードが出るが、往路で見かけた無数の落石を踏まないように細心の注意を払う。寒いので無性にリンガーハットのチャンポンを食べたくなり、落石を見るたびなぜか長崎ちゃんぽんを連想した。以下の写真、手でつかめるサイズくらいがミドルちゃんぽん。100mごとに1個くらい落ちている。

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手のひらサイズのスナックちゃんぽんは数え切れないほど。1kmに1個くらいはさらに大きな通常サイズのちゃんぽん。たまに漬物石大の凶悪な野菜たっぷりちゃんぽん、さらに無料の麺2倍サービス、特大隕石のようなオブジェも置いてある。万が一乗り上げれば自転車は即死、車でもパンパーのへこみは免れられないだろう。

断崖区間は路肩に近寄らないで

自転車は原則キープレフトだが、温水峠から岐阜側への下りで左は断崖絶壁である。ブラインドカーブにミラーは設置されているので、注意して堂々と道の真ん中を走ろう。上りより下りは10倍注意してほしい。

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寒くてブレーキが握れない、洗い越しでスリップする、落石に気を取られてカーブを見失うなど、一瞬のミスで崖下ダイブは必死。さすがにやばいところは申し訳程度にロープが張ってあったりするが、基本路肩は無防備である。路上を走っているときは見えないが、ふと足を止めて奈落をのぞき込めば、足がすくむような谷底が広がっている。

帰り道でチューブレスタイヤがパンク

慎重に走っていたつもりが、黒津の猫峠分岐前で後輪がバスンと大きな音を立ててパンクした。引き返して路面を調べるが、特に目立つ落石はない。もっと前に踏んだ小石で徐々に空気が漏れていたのだろうか。

今年3月末に新品交換したIRC X-Guardのチューブレスタイヤだが、さすがに頑丈で宮古島トライアスロンや夏の国道299号往復でもノーメンテでしのいで来られた。微細なピンホールはシーラントが塞いでくれていたのかもしれないが、今回のパンクは目立つ穴が見当たらず、シーラントの噴出もなかった。さすがに8ヶ月も入れっぱなしだと、内部で枯渇してしまったのかもしれない。

ロードバイクのタイヤを交換した。IRC Formula PR...

まだ15時台ではあるが、山陰に隠れて日も差さず、ますます風も強くなってきて体が冷えるので、とりあえず落ち着いてパンク修理できるところまで歩いて自転車を引きずっていくことにした。

パンク修理は諦め10km歩いて帰還

数キロ歩いてようやく日なたに出たので、携帯ポンプでタイヤに空気を入れてみる。数十回押したところでまったく空気が入る手ごたえがなく諦めた。タイヤ脇にシーラントの残骸と思しき液体がにじんでいて、ビードは上がったままのようだがタイヤはふにゃふにゃである。チューブレスに変えてからツーリング中にパンクしても空気補給しながら自走で帰って来られたが、どうやら今回はうまくいかないらしい。

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予備で持っているクリンチャー用のチューブを入れて帰るという選択肢もあったが、寒い中、固いチューブレスタイヤをレバーで着脱するのが非常に煩わしく思われた。このままパンク修理に時間をかけるよりは、残り10km強このまま歩いて帰った方が安全な気がした。往路で道はわかっているし、本格的に日が暮れる前には集落にたどり着けるはずだ。

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そんなわけで、今思えば冷静にチューブを入れて自転車に乗って帰った方が早かったかもしれないが、2時間ほど歩いて道の駅まで引き返した。途中、猫峠の工事関係者が車で続々帰って行くところだったので、不測のトラブルがあればヒッチハイクすることもできただろう。157号の温水峠付近も、まったくの無人ということではない。

道の駅を過ぎたあたりで知人から電話があり、状況を説明して車でピックアップしてもらえた。おかげで明るいうちに樽見まで帰って来られたが、温水峠に挑んだ2回とも帰り道でパンクに遭うのは因縁を感じる。

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決して万人向けではない国道157号と温水峠

一応、目的を果たして温水峠まで辿りつけたが、やはり157号は断崖だけでなく路面状況も厳しく、万人におすすめできる自転車コースではないとわかった。パンク後に寂しい山道、寒い中とぼとぼ歩いて帰ったのは、久々にきつい経験だった。日なたに出るまではトゥーカバーを付けていても足先が凍えて感覚がなかった。もしロードバイクで温水峠に上るなら、それなりの覚悟と装備で慎重に臨んでほしい。

岐阜県本巣市~揖斐川町エリアから福井に抜ける道路が3つあると...

なお、岐阜の奥美濃から福井に抜けるには、さらに冠山峠・高倉峠という2つの林道があるが、そちらはさらに道も狭く荒れていて上級者向けだ。

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