キタタン2016 本番

距離44.24km、獲得標高2,900m(公式パンフによる)。富士山であれば吉田口五合目から山頂までの2往復に相当する上り下り。まさにマウンテンマゾヒストのための祭典「北丹沢12時間山岳耐久レース」。日頃の奥多摩トレイルランニングの練習成果を試し、10月のハセツネ予行練習として、本格的な山岳レースに初挑戦してみた。

相模湖駅からシャトルバスで青根緑の休暇村へ

エントリー時のマラソンベストタイム申告で、6:30スタートの白ゼッケンが割り当てられた。スタート地点の青根キャンプ場へのアクセスは、レンタカーやテント泊などいろいろ検討したが、相模湖駅から出る臨時シャトルバス(片道1,000円)を利用させてもらうのが、一番リーズナブルと思われた。

朝4時に起きて、若干準備に手間取り最寄り駅にダッシュ。その間、グレゴリーのバッグのジッパーが閉まらず開けたまま走ったら、ウォーターバックが外れて水1リットルくらいぶちまけてしまった。バッグの上部を折り畳みスライドさせて挟み込む仕組みだが、ロック機構がないので、ジッパーを開けたままだと滑って外れるらしい。

始発に乗っても相模湖に着く頃には最初のバスが出てしまっている。会場により近い、八王子のカプセルホテルに前泊することも考えたが、それなら道志みちの民宿にでも泊まった方がましだ。事前情報では最初の山でかなり渋滞するらしいので、10分くらいスタートが遅れても問題ないかと考えた。

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相模湖駅に着くと、大会のバスが待機していた。同じ電車で到着した参加者を乗せ終えるとすぐ出発。予想通り、先週自転車で走った76号線を南下して、30分程度で会場に到着した。大型バスでは対向車をかわすのもきつそうな狭い山道だが、まだ朝早い時間でそれほど交通量はないようだった。

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6:30の白ゼッケン組スタート3分前くらいに到着。事前に郵送されたカードと引き換えでゼッケン、計測チップ、Tシャツと温泉入浴券を受け取る。スタート号砲、花火のカスが降って来るなか、荷物を預けて装備を確認。そのまま走れる格好で出てきたので、すでに見えない先頭集団に追いつくべく、キャンプ場の最初の坂から走って飛ばした。

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渋滞待ちの間にヤマビル退治

最初の水補給所を過ぎて登山口に入ると、噂に聞いていた渋滞の末尾が見えてきた。1人分の幅の登山道を見渡す限り人が埋め尽くしていて、一歩も進まない。スタートから30分は過ぎているが、みな立ってぶらぶらしている。行列が進むスピードはディズニーランド並みに遅い。

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ひまなので、これから平丸分岐に向かうらしいスタッフさんと雑談していたら、なにか路面をくねくね動く緑色の物体があった。ヤマビルとの初遭遇。

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これは退治せねばということで、スタッフの方のストックの先端にヒルを載せて、持参したライターを恐る恐る近づけたら、くねっと身をかわして地面に落ちてしまった。火で殺すなら、チャッカマン型のライターでじっくり炙らないと死なないらしい。地面の石の下に隠れてしまったので、とどめを刺すのはスタッフさんに任せて出発した。

ヒル退治の間に、いつの間にか行列が進んで見えなくなったので、走って上っていく。ほどなく合流すると、分岐地点から下りになった。下りの道はそれほど安定していないのだが、みな渋滞で鬱憤がたまっているのか、かなりのペースで駆け下りていく。最後尾なので後ろからせかされることはないが、前の人に遅れないよう、ついていくのに必死だった。

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そうこうするうちに、ピンクゼッケンの7時スタート組、トップランナーが数人駆け下りてきた。キタタンで記録を目指すなら、最初の渋滞につかまらないのはマストだろう。スタート地点から登山口までのロード区間、結構きつい上りもあるが、ここで飛ばして集団前方のポジションを取らないと、渋滞で苦々しく足踏みする羽目になる。今回は出走遅れで最後尾についてしまったが、それだけで30分はロスした気がする。

長いロード区間を経て鐘撞山へ

沢沿いに下りて舗装路に出てから、立石建設の分岐点まで7kmくらい、若干下って上り返す感じでひたすらロードを走る。音久和の分岐からは先週練習で走ったルートなので、距離感はつかめた。ここはまだ標高も低く、日差しと暑さが身にこたえる。すでに歩いているランナーも何人かいるが、少しでも次の渋滞をパスしようと、がんばって走った。

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立石建設で水補給。水については補給スポットがコース上、合計6か所あって充実していた。初参加で勝手がわからなかったので、5リットルのバッグでぎゅうぎゅうに水と食料を詰め込んできたのだが、自分はかなり重装備な方だった。ハイドレーションパックを背負っている人は少ないし、ウエストポーチだけという人もいた。相変わらずグレゴリーのバッグの水はチューブ経由ではまずくて飲めず、予備として1リットルくらい入れていた水は結局手をつけなかった。10kmおきくらいにある給水所で、自転車用のボトルに補給してもらって、スポーツドリンクの粉を溶かして飲むだけで足りた。

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再び山道に入って鐘撞山を目指して登り始める。再び渋滞が発生して、つづら折りを行列になって進んでいく。杉の木の林で、路面は落ち葉でふかふかしていて歩きやすい。ペースはゆっくりだが、決して休むことのない死の行進。急登に耐え切れず一人、また一人と脱落していくが、誰も声をかけることはない。ところどころ木にもたれたり、うずくまって休んでいる人が出てきた。

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鐘撞山の山頂ではスタッフさんが鐘を鳴らしていた。その後のフラット区間は休む間もなくみな走るので、ついていくのに必死。尾根分岐に向けて再び坂を登ると、次第に霧が立ち込めてきた。こちらもきつい坂だが、標高が上がってやや涼しくなってきたのが幸い、黙々と登る。

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尾根分岐からの下りは、みな恐ろしいスピードで飛ばしていた。登りはセーブして、下りで飛ばすのが、トレランレースのセオリーなのかもしれない。前の人も、ペースが速いので滑ったり転んだりしそうになるが、そこは鍛えているのか、よろめいてもすぐ体勢を立て直す。ちょっと遅れた人は、後ろから追い上げてくる集団のプレッシャーが大きいのか、登りよりも道を譲ってくれる場合が多い。レースに集中して写真を撮る余裕がなかったが、霧の中を集団で駆け下りて行く場面では、ベルナルド・ベルトルッチの『暗殺の森』という映画を思い出した。

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猛スピードであっという間に山を下って、沢沿いのガレ場に到達。次の補給場所、第1関門の神ノ川ヒュッテへ。ここではバナナとキュウリも出ていた。このレースで食料の補給はないと思って、数食分の菓子パンを背負ってきたのだが、終わってみると結構余った。キタタンの補給食は羊羹やジェル類だけでよかったかもしれない。水も豊富に用意されていて、その場で飲むだけでなく、ボトルにもたっぷり給水させてもらえる。

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犬越路からガレキの舗装路を下る

ここから日蔭沢源頭に向かって、標高差400mほどある3回目の登り。距離は短いが勾配は本レースで一番急だった。

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階段や、滑りやすい斜面をいくつか超えて、やや下りのフラット区間へ。危険個所ではスタッフの人が待機していて励ましてくれるが、ランナーの顔色を観察して、体調が悪そうな人には休憩やリタイア勧告をしているらしい。並走している救護班の無線を聞いていると、熱中症リタイア続出とのことだった。道すがら、しんどそうに木にもたれている人や、諦めてコース外の斜面を下りてくる人もいた。

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犬越路のトンネルから先は、長い下りの林道だった。半分くらい舗装されているが、砂利道では尖った石が多く、派手に転ぶと大ケガしそうだ。道志みちから丹沢湖にショートカットできるルートなので、ロードバイクで走れないか以前、地図上で検討したことがあるが、これは厳しそうだ。

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路面は悪いがずっと下りの広い道なので、思ったよりスピードが出て20人くらい追い越せた。砂利道の区間は、ソールが硬いトレランシューズでも足裏が痛くなるくらいのガレキばかり。トンネルを超えて、第2関門の補給ポイントに到着。ここでも水以外に、クリームパンの配給があった。コース図によると、ここからゴール前の平丸まで補給がないが、姫次にも私設エイドがあると聞いてほっとした。

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袖平山を経て姫次へ、最後の登り

ここから先は、先週の試走で走ったコース。袖平山まで800mくらいの標高差を登る。ここまでくると渋滞もばらけてきたが、遅い人がいるとしばらく団子ができる。登りで追い抜くのはエネルギーがいるし、後ろに人が溜まってきても脇によける余裕がないのかもしれない。何十分も黙々と登っていると暇なので、追い越しで声をかける際に少し世間話もするようになった。キタタンは何度目の参加だとか、他にどんなスポーツをやっているとか。きつい登りも、会話が弾むと多少気が紛れて楽になった。

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袖平山に到着するが、あとはもう下りだけだからか、山頂で休んでいる人は少ない。姫次までは一気に行こうと思って、自分も走って通過した。ここから先、若干岩場もある下りで、ものすごいペースで追い抜いていく人がいた。姫次では聞いていた通り水の補給があったが、人力でここまで運んでいて量に限りがあるので、コップ2杯ほどにとどめておいた。

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姫次から平丸まで下ってゴール

ここから5kmほど、平丸分岐まではゆるい下りなので快適に飛ばせた。分岐から先は曲がりくねった細い道だが、後ろから猛スピードで駆け下りてくる集団が見えたのでハイペースで走った。道志みちをくぐって集落に入り、最後の岩場をパスして休暇村のキャンプ場でゴール。スポーツドリンクと、うどんをもらえた。

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リザルトは7:32:45で、男子39歳以下カテゴリーで出走383人中140位。初めてのトレランレース参加で完走できてうれしいが、もしタイム向上を目指すなら、登りの渋滞対策、スタート時のポジション取りが大事だろう。もし先頭集団に入れて、まったく渋滞なしでいけたら30分はタイムが縮まると思うが、序盤ロード区間は相当飛ばす必要がありそうだ。

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無料チケットで温泉「いやしの湯」に入って汗を流し、30分ほど出発を待ってからバスで相模湖駅へ。レース後でそれなりに足は痛いが、ウルトラマラソンほどの疲れではないと思った。しかし、翌日からほぼ1週間、太もも前後に史上最高の筋肉痛が出て、特に階段を下りるのがきつかった。普段の山登りではここまでダメージは出ないから、レースの下りで飛ばしまくったのが原因と思われる。トレラン対策としては、普段から下り坂トレーニングで鍛えておいた方がよさそうだ。

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参加賞のTシャツ

「キタタンのTシャツはダサい」と聞いていて、あまり期待していなかった。正面中央部に切り替えしがある、2トーンの独創的なデザイン。縫い目を肩からずらしてバッグと擦れるのを防ぐ、というような機能的な意味はなさそうだ。コース中で何度も見かけた、三角形のキタタン君(?)ロゴは、案外いいかもしれない。

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背面は湘南マラソンTシャツのように、袖部分だけの色違いで、背中に大きなロゴがある。後ろからの見た目は案外普通。

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トレイルランニングのレース戦略

トレランレース初参加でわかったのは、「登りはゆっくり歩くが、平地と下りは恐ろしく飛ばす」ということだ。たいてい道幅の狭いシングルトラックなので、ロードバイクの集団走行のように、まわりとペースを合わせる必要があって気を遣う。下りは膝が痛くなるのであまりスピードを出したくないが、後ろから速い集団が下りてくると、相当プレッシャーを受けて張り切ってしまう。

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後ろがつかえているとわかると脇にそれて道を譲る人もいるが、振り返る余裕もないのか絶対に譲らない人もいる。そういう人を、脇道の藪に入って無理やり抜いていくランナーもいる。登りは追い抜くものしんどいので、みんなで仲良く登山という雰囲気だが、平地から下りになると急にハイペースになって、これがレースであったことを思い知らされる。

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後発のトップランナーが数人、ものすごいスピードで駆け下りていくのを見た。覚悟を決めれば岩場も飛ぶように下りられると思うが、一歩間違うと最悪、コーナーで減速できず滑落してしまいそうだ。歩幅を狭めて2倍くらいステップを増やすと、多少路面が不安定でもこけずに飛ばせるとわかったが、自転車でいうケイデンスを上げるような感じで心肺の負荷が一気に増す。足元と行く先を両方見渡して、走りながら、安定して踏める足場を瞬時に判断する集中力が必要だ。多少滑っても構わないくらいの気持ちでテンションを上げればスピードは出せる。石につまづいたり、根っこに足を取られてよろけても、転ばずに体制を立て直せるバランス感覚も重要だと思った。

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マラソン大会よりエイドは少ないので、どのくらいの水と食料を背負えばよいか迷うが、慣れたレースでペース配分と補給計画を立てられるなら、ぎりぎりまで荷物は減らした方が負担は軽い。速い人では「ウエストポーチにボトルだけ」という人もいた。ハイドレーションパックは便利そうだと思って買ったが、水がまずいのと、休む時はバックを下してしっかり補給するので、キタタンに関しては、走りながらボトルを取り出せるポーチがあれば十分な気がした。

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