ラピュタ坂ヒルクライム攻略法

ラピュタ坂を体験して、「上る力が足りなくて減速(落車)する」ことよりも、「前輪が浮き上がって後転してしまう」ことの方が問題だとわかった。では「なぜ前輪が浮くか」を考えると、たどり着いた結論は以下の通り。

  1. 重心はなるべく低く、前へ
  2. 体重は重い方が有利
  3. ホイールベースは短い方が有利

1は直感的にわかるとしても、2は登坂の推進力、3は1の重心の位置にも絡んでくるので一概に正しいといえない。あくまで「前輪の浮き上がりを抑える」という観点から導かれた結論だ。

ヒルクライム中の力のつり合い

車体と人間を合わせた重心に集中加重\(W\)が作用し、ローラー支持の前輪接地点(\(F\))と、ピン支持の後輪接地点(\(R\))で支えられている静定構造物を仮定する。\(FR\)間のホイールベースを\(L\)、\(R\)点から重心までの斜面垂直距離を\(H\)、斜面水平距離を\(T\)とする。下の図は、ラピュタ坂の最大勾配といわれる28%で描いてある。

raputa_figure01

斜面垂直方向の力のつり合いより、

\[V_F+V_R=Wcos\theta\tag{1}\]

斜面水平方向の力のつり合いより、

\[H_R=Wsin\theta\tag{2}\]

\(R\)点まわりのモーメントのつり合いより、

\[TWcos\theta=LV_F+HWsin\theta\tag{3}\]

(3)式より、

\[V_F=\frac{W(Tcos\theta-Hsin\theta)}{L}\tag{4}\]

(4)式を(1)式に代入して、

\[V_R=W(cos\theta-\frac{Hsin\theta-Tcos\theta}{L})\tag{5}\]

これで反力\(V_F\)、\(V_R\)、\(H_R\)は求められた。「前輪が浮く」臨界点とは、\(F\)点の垂直反力\(V_F=0\)となる状態である。すなわち前輪を接地させることだけを考えるなら、\(V_F\)がなるべく大きくなるようにパラメータを設定すればよい。

(4)式より、以下の因果関係が推測される。

  • \(V_F\)は\(W\)(加重)に比例する
  • \(V_F\)は\(L\)(ホイールベース)に反比例する
  • \(theta\)(勾配)が大きいほど\(V_F\)は小さくなる
  • \(T\)が大きい(重心が前にある)ほど\(V_F\)は大きくなる
  • \(H\)が小さい(重心が下にある)ほど\(V_F\)は大きくなる

ヒルクライムには前傾姿勢が有利

\(W\)、\(L\)、\(\theta\)が定数だとすると、\(T\)を最大化し\(H\)を最小化することで、\(V_F\)を大きく保つことができる。勾配28度くらいまでなら、\(cos\theta > sin\theta\)なので、\(H\)を減らすより\(T\)を伸ばす方を意識した方がよさそうだ。具体的には、ダンシングで重心を前に移すか、姿勢を低くし頭を突き出す、御堂筋君のような超前傾姿勢が理想的だ。一方、\(L\)が長くなれば、\(T\)も前方に伸びるので、「ホイールベースが長いと不利」とは断定できない。

激坂ではむしろ重い方が有利か?

登坂中の姿勢を静止状態で幾何学的に見ると、重量がある方が前輪の浮き上がりを抑えられることがわかる。しかし、\(R\)点の水平反力\(H_R\)はペダリングで後輪に伝えるトルクと等価なので、(2)式により、重量とペダルを回す力は比例することがわかる。つまり、車体重量と体重が2倍になれば、2倍しんどくなる。

また、同じく(2)式で\(H_R\)が\(sin\theta\)にも比例するので、グラフを見ると勾配28°くらいまでの世の中の坂は、斜度が上がるとほぼ線形に負荷も上がると考えられる。\(R\)点での水平反力に限っては「特定の傾斜を超えたら急にきつくなる」というようなことはない。

ただ、勾配がきついと重心を前に移して前輪の浮き上がりを抑えるため、ダンシングや極端な前傾姿勢を取らざるを得なくなるので、その意味では無理な姿勢で身体的な負荷は高まると推測される。

よろしくないバイクセッティングの例

重心をなるべく前方下側に寄せるという観点からは、ロードバイクの装備もできるだけハンドル~前輪側に固めた方がよい。可能かどうかわからないが、長めのエアロバー装着の上、そこを握って激坂ダンシングできるようになれば、下ハンドルよりも有利かもしれない。以下の写真はラピュタ坂攻略に失敗したバイクセッティングの悪い見本だ。

raputa_bike

サドル後方のボトルケージにツールケースと輪行バックを2本差し、さらにツールバックも無理やりねじ込んである。28度の傾斜だと、この位置にある荷物は確実に後転をうながすモーメントに寄与するので、サドルの後ろはなるべく空けておいた方がよい。

逆に効果が見込めそうなのは、あえて前輪だけ重めのディープホイールを履くとか、前輪ハブに鉛を巻くとか…。無理に全体の重量を増やす必要はないが、移動できるツールやガジェットはなるべくハンドルまわりやフォーク・ダウンチューブに固めた方が、重心移動の効果を得られそうだ。

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